無事、富士通リプレイスプロジェクトは稼働した。通常、難航したプロジェクトが予定どおり
稼働すれば嬉しくてたまらないのだが、今回のプロジェクトはそうではなかった。顧客も感謝
の弁は述べるものの、プロジェクトの難しさを痛感している様子だった。うちの精鋭メンバー
たちも魂が抜けたようになった。その後、しばらく仕事に熱が入らなくなった。そして最後に
大きな問題を残したのが赤字だ。
このリプレイスプロジェクトは富士通は赤字覚悟の案件だったが、あまりの巨額の赤字に担当
した部長たちの責任問題に発展するとのことだ。とはいえ、僕の会社でも3億円近い赤字が出た。
会社は上場を控え、前期数億円の経常利益を出していたが、それの大部分を消し去ってしまっ
ていた。要因はもちろんシステム規模の増大。当初見積りの2倍に達してしまっていたこと
で、人件費が莫大に膨らんでしまっていた。
僕は責任を取るため、辞表を認めた。
「無事稼働させることが出来たなら、取り戻せる可能性が出てくる」
「真田、赤字分を回収してくれ」
長門社長から大きな損失を取り返すよう、命が下った。
それまで富士通とシステム規模の見積りに関するやりとりを、文書で何度か取り交わしてい
た。規模が膨らんでいたことを富士通側が理解・容認した、しない等、様々な角度からの検
証や交渉が行われた。藤本さんは、顧客へ長期の回収プランを提案し、交渉を勝ち取り、
富士通も大きな赤字は回避できる目途がつきそうだった。
僕は1年半ほどかけてメーカー上層部との面談を重ね、赤字分を回収するに至った。3億の赤
字がほんの少しだけ黒字になった。かろうじて赤字を解消した僕とは対照的に、上場を果た
した会社は、急ピッチで階段を駆け上っていた。