その後、何度も外部の顧客から仕事を獲得でき、順調に経験を積み、実績を示すことが
出来るチームになってきた。僕は相変わらず仕事が楽しくて、会社へ行くのが楽しくてしよう
がなかった。それは長門さんへのリスペクトと後輩たちのバックアップが信頼を固くし、みん
なで成長している感覚に手ごたえがあった。

ただ残業は増え続け、だんだん自宅へ帰らず会社に泊まる日も増えてきた。もちろん幻想だが
、眠らなくてもいいんじゃないか。と思うようにさえなってきた。僕はここまで頑張れるモチ
ベーションがあり、それなりに実力もついてきた今、この会社のために仕事をするのではなく、
自分たちのために仕事は出来ないだろうかと考えはじめていた。

ある社外プロジェクトを完遂し、打ち上げを行うことになった。徹夜が続いたプロジェクトの
打ち上げは、荒れに荒れる!普段は大人しい真面目なメンバーが豹変して、高圧的になった
り、ケンカにはなったりしなかったけど、みんなの距離が一気に縮まる時でもある。
その夜、僕は長門さんにふとこんな相談をしていた。

「こんなに仕事を頑張るんだったら、どうせなら自分たちの会社で頑張りたい!」
と長門さんの体を揺らしていた。
「そうだな」
長門さんも否定はしなかった。

それから何度かそういった話を長門さんと交わしたように思う。僕は実現する術を知らなかっ
たが、長門さんはそれを真剣にとらえて考えてくれたようだ。

長門さんは何ケ月か後、相談があると僕と他4名を会社近くの喫茶店に呼び出した。
「会社を立ち上げようと思う」
「ついてきてくれるか?」

協力会社の社員でSE歴10年超の中垣、会計システムのプログラミングを担当した久保、グル
ープ会社から異動でやってきた丘崎、プログラミング能力の高い唯一の女性メンバー室岡。

「もちろんです」
僕は即答した。僕が言い出した話でもある。正直、僕は躊躇も怖さもなく、期待感に包まれ、
数年前に想像していた、何か大きなことを成し遂げられるのではないか。という気持ちになっ
ていた。長門さんにしても、10年勤め、未来を嘱望された優良企業を辞めることになるわけだ
が、彼なりに自信があったはずだ。

他のメンバーも同様にその場で承諾した。気がかりなのは、僕の後輩たちがまだ何人もいるが
、彼らは1名も含まれていなかった。そのことを長門さんが説明した。

「十兵衛さんからストップがかかった」

【これ以上引っ張ったら、許さん】

と言われたそうだ。確かに僕たちが抜けるだけでも痛手だが、他の後輩たちもいなくなれば、
会社は立ち行かなくなるはずだった。長門さんは、十兵衛さんとは長く上司、部下の関係で、
たくさん引き立ても受けていたはずだ。怒ると怖い十兵衛でも有名だった。今後も情報子会社
には協力を尽くしていくことで、了解を得たとのことだった。

新しい会社に誘われた後日、
「これからさらに頑張りますので、よろしくお願いします!」
【あなたのためなら死んでもいい】
とさえ思っていると、僕は長門さんに伝えそうになっていた。

「頼むぜ」
と笑って返してくれたが、僕の決意表明でもあったし、それまでの感謝の気持ちでもあった。
今思うと、【死んでもいい】なんて、若気の至りに違いなかった。ただ、その言葉はずっと胸
に残り続けていた。

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