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函館上陸
午前3時50分実に快適でない朝だ30分ほども眠っただろうかだが家系のせいか食欲はあった いよいよ北海道だ 函館に着いてまず思ったのは実にホコリが多いアスファルトの道路もスパイクタイヤのせいか、ボロボロだ 6時22分発の電車に乗るまで時間があるので... -
青函連絡船
今は八戸の手前のあたりだろうか小椋佳の曲を聴いている「飛べない蝙蝠」という曲だせつないという言葉が脳裏をかすめた 鎌倉のことを思い出したのだ報国寺の竹やぶから空をあおぐボーイスカウトの少女の後ろ姿が目にうかんだ その風貌は春の光のように暖... -
日の暮れた情景
高村光太郎の妻である智恵子の故郷、二本松を過ぎた時歳は40代の初めのころだろうか彫の深い顔つきのおじさんが時間を尋ねてきた 少し話をしてみると福島へ出稼ぎに出かける途中だという外を見ながらおじさんは、「こんな景色は嫌いだ」と言ったさきほどの... -
車内に響くサックスの音
黒磯を過ぎた頃、窓の外には枯野が続いていた学生の頃から枯野に憧れがあった僕の理想とする枯野に近かったように思う 当時、枯野について詩を書いたことがあるそれはあの人のことを書いたものであったため、枯野を見ていて思い出し、一瞬、胸が締め付けら... -
旅日記を載せてみる
僕は20歳の時、ひとりで北へ向かって旅に出た。後にそれを旅日記にして写真付きの冊子を作ったようだ。実家の荷物を整理していたら偶然出てきたので、箸休めに載せてみる。生前、父は食い入るように見ていたのを思い出した。 午前6時 渋谷にある兄貴のア... -
ひとりにしない約束
島の病院に駆けつけた僕たちは、母親が小さく息を繰り返しながら、目を閉じて、いや少し薄目をあけて遠くを見ているような表情を見つめていた。意識があるのか、ないのかわからなかった。 兄ちゃんが「かあちゃん、来たよ」と叫びながら手を握ると少し目を... -
見送るという作業
おふくろが危篤じゃ! 兄ちゃんから電話が入ったのは、年の暮れの取引先への挨拶回りが終わった時だった。入院先から実家に戻って2ケ月ほど経過したタイミングだった。母親が自宅から救急搬送され、危篤状態であると知らされた。 入院先は市内から少し離れ... -
母である時間
おふくろが倒れた!兄ちゃんから電話があったのは、猛暑が連日続く8月の上旬で、実家で倒れて救急搬送されたとのことだった。 母親は肥満気味で、心不全の兆候が出てきており、近頃では歩いただけでしんどそうな顔をしていたりする。 「大丈夫?」と聞く... -
やまなみハイウェイ
大分から阿蘇まで続くドライブコースに【やまなみハイウェイ】がある。小学6年生の春に、修学旅行ではじめて訪れた。 先生方を含め、1学年総勢200人近くがバス4台で移動する。遠足とは違い、親たちがいない環境でみんなと一緒に旅行するのは、なぜか無意識... -
不器用な男②
高校で名前を上げた兄ちゃんは、瀬戸内海沿線を走る電車で10分ほどかけて通学をしていた。 一番後ろの車両に乗り込み、ゆっくり4両編成の車内を歩き、先頭車両に到着する頃には、カバンの中にたくさんのお金が集まっていたらしい。「なぜか、みんながくれ...