日の暮れた情景

高村光太郎の妻である智恵子の故郷、二本松を過ぎた時
歳は40代の初めのころだろうか
彫の深い顔つきのおじさんが時間を尋ねてきた

少し話をしてみると福島へ出稼ぎに出かける途中だという
外を見ながらおじさんは、
「こんな景色は嫌いだ」
と言った
さきほどのサックスおじさんとは種類の違う人間だが
憎めないなあと感じてしまった

福島から北へ30分
もうほとんど雪はない
何の木だろうか
葉を一枚もつけていない
まるで苦しんでいるかのような形をした木が
いたるところで見られる

窓の外は柔らかいみずいろの空が
北の方角にわずかに見えた
日が暮れた列車から見えるかすかな風景は
積雪と空の余韻のため青白く、寂しさを誘うようだ

花巻に到着
この地で宮沢賢治がこんな詩を詠んでいる

日ざしがほのかに降ってくれば
またうらぶれの風も吹く
にはとこやぶのうしろから
二人のおんながのぼって来る
けらを着 粗い縄をまとひ
萱草の花のやうにわらひながら
ゆっくりふたりがすすんでくる
その蓋のついた小さな手桶は
今日ははたけへのみ水を入れて来たのだ
今日でない日は青いつるつるの蓴菜を入れ
欠けた朱塗の椀をうかべて
朝の爽やかなうちに町へ売りにも来たりする
鍬を二梃たゞしくけらにしばりつけてゐるので
曠原の淑女たちよ
あなたがたはウクライナの
舞手のやうに見える

日が暮れてしまったため、
詩の情景を思い浮かべるのはむずかしかった

目次