僕の幼なじみ、こうちゃんは4歳からの付き合いだ。
僕の実家の200mほど下ったところに、こうちゃんの家がある。
こうちゃんのお父さんは、大きな造船会社の副社長で、
見るからにかっこいい人だった。
山本五十六の血を引く家柄だそうで、それで造船なのかどうかは未だ不明だ。
こうちゃんは、とても好奇心が強く、子供ながらたくさんのことを知っていた。
ものづくりでも高い技術を持っていて、驚かされたことが何度もある。
そんな僕は、こうちゃんにライバル心からか、
しきりに自分が前に出ようとしていたように思う。
話を持ち掛けたのは僕だった。(大体、何かを言い出すのは僕)
以前から飛び道具が好きで、手裏剣を作ってみたいと言い出した。
こうちゃんに相談すると、大きな金切りばさみを持ってきて、
「行こう!」
という。
近所に鉄工所があり、
こうちゃんは、その工場のそばに鉄板の廃クズが捨てられているのを知っていた。
それは捨てられているのか?と思いながら、
「何枚かもらおう」
こういうところは僕がいう役割だ。
こうちゃんは何も言わず、
鉄板をメジャーで計測して、直径10cmほどの模様をマジックで描き始めた。
模様は★の形で、10枚ほど描いてくれた。
こういうところはホント感心する。
ふたりで代わる代わる、これを金切りばさみで切り始めた。
鉄板は厚さ1~2mmほどで、子供が切るには骨が折れた。
ぐにゃっと変形した★が10枚ほど切り出された。
こうちゃんは今度ハンマーを取り出し、
石の上でぐにゃぐにゃに曲がった★を叩いて整形した。
「何やってんの?」
こうちゃんのお母さんが顔を出してきた。
もともとは神戸のお嬢様だと聞いたことがある。
「うるさいから、静かにしんさい!」
こうちゃんが今度は、【ヤキ入れ】 をする。という。
「ヤキ入れって何?」
鉄を高温で熱し、水や湯につけて急激に冷却すると、
鉄の中の炭素が固体化され固くなる。というものだ。
こんなこと、小学生が知ってる?
一斗缶(アルミ缶)に火をおこし、★を赤くなるまで熱する。
もちろん火ばさみで掴んで、水の入ったバケツへどんどん放り込む。
「ジュン!ジャン!」
煙をだしながら、バケツの底に沈んでいく。
最後は、「研ぎ」の工程だ。
包丁を研ぐ砥石を持ってきて、★の先をひとつづつ砥石で研ぐ。
★は黒くなっていたが、先っぽの箇所は怪しく光りだした。
出来た!
僕たちは試し投げができる場所を探した。
本当に申し訳ないんだけど、
こうちゃんの家と道を隔てた隣の家が、恰好の標的として木塀で囲まれていた。
僕がひとつ投げてみた。
「ピキィ~ン!」
鋭く突き刺さり、厚みが伝わる高い音を立てた。
「かっこええ!」
忍者のようにふたりは、何枚も続けざまに投げた。
「カッ、カッ、カッ、キッ、ピキィーン!」
手裏剣が並んで木塀に突き立った。
すぐに隣の家のおばさんが出てきて、
「コラー!」