僕の兄ちゃんは、勉強ができるほうでもなく、とりわけ運動神経が良かったわけでも
ない。でもいつもニコニコして、明るくて、相手のいいところを見つけたら素直に褒める
人だった。疑うことがない純粋な人だ。
僕は兄ちゃんのように素直な言葉が使えなかった。思っていても、恥ずかしくて言え
なかったり、相手に対するリスペクトを言葉に表すことが出来なかった。兄弟ながらも
この人は、すごくカッコイイ人なんだと感じていた。
兄ちゃんが小学校に通っていた頃、不良と呼ばれる少年が学校に溢れ、学校は随分と荒れていったようだ。
兄ちゃんのクラスの生徒が、不良たちに度々いじめられていたそうで、こぶしを使うわけではなく、
「やめんか。かわいそうじゃろうが!」
と割って入って、いさめることが何度もあったようだ。そうしているうちに、少しずつ
兄ちゃんは不良たちに認められるようになったらしい。
兄ちゃんは優しい性格のまま中学に入り、グレることもなく学校生活を過ごした。
ただ受験勉強に失敗したことで、県下でも有名な指折りのヤンキー高校へ入学した。
入学した当初、学校へ行きたくないとこぼしていた。今まで見たことがないような強烈な
不良がひしめき、ケンカがあふれる日常の学校には、誰だって行きたくないはずだ。
しばらくすると、毎日のようにケンカして帰ってきた。顔は腫れ上がり、服は破れ、
何も言わずに2階の自分の部屋のベッドに潜り込んだ。破れた制服を何度も買い替え
た頃には、顔つきが変わっていた。
最初は言いがかりのようなケンカが多かったようだけど、だんだん理不尽なことや、
許せないことへの反抗をエネルギーに変えているかのようだった。
入学から半年も経過しないうちに、少しくせっ毛の七三の髪型は、きついパンチがかかっ
たリーゼントになった。戦い抜くと決めたのだろう。
兄ちゃんは高校3年に上がって間もなく、不良高校の頂点に立った。