不器用な男①

僕の兄ちゃんは、勉強ができるほうでもなく、とりわけ運動神経が良かったわけでもない。
でもいつもニコニコして、明るくて、相手のいいところを見つけたら素直に褒める人だった。
疑うことがない純粋な人だ。

僕は兄ちゃんのように素直な言葉が使えなかった。
思っていても、恥ずかしくて言えなかったり、
相手に対するリスペクトを言葉に表すことが出来なかった。
兄弟だけどこの人は、すごくカッコイイ人なんだと感じていた。

兄ちゃんが小学校に通っていた頃、不良と呼ばれる少年が学校に溢れ、
学校は随分と荒れていったようだ。

兄ちゃんのクラスの生徒が、不良たちに度々いじめられていたそうだ。
こぶしを使うわけではなく、
「やめんか。かわいそうじゃろうが!」
と割って入って、いさめることが何度もあったようだ。
そうしているうちに、少しずつ兄ちゃんは不良たちに認められるようになったらしい。

兄ちゃんは優しい性格のまま中学に入り、グレることもなく学校生活を過ごした。
ほとんど勉強をしなかったこともあり、高校の受験勉強らしきものはしないまま、
県下でも有名な指折りのヤンキー高校へ入学した。

入学した当初、学校へ行きたくないとこぼしていた。
今まで見たことがないような強烈な不良がひしめき、
ケンカがあふれる日常の学校には、誰だって行きたくないはずだ。

しばらくすると、毎日のようにケンカして帰ってきた。
顔は腫れ上がり、服は破け、何も言わずに2階の自分の部屋のベッドに潜り込んだ。
破れたガクランを何度も買い替えた頃には、顔つきが変わっていた。

最初は言いがかりのようなケンカが多かったようだけど、
だんだん理不尽なことや、許せないことへの反抗をエネルギーに変えているかのようだった。

入学から半年も経過しないうちに、少しくせっ毛の七三の髪型は、
きついパンチがかかったリーゼントになった。
戦い抜くと決めたのだろう。

兄ちゃんは高校3年に上がって間もなく、不良高校の頂点に立った。

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