高校で名前を上げた兄ちゃんは、
瀬戸内海沿線を走る電車で10分ほどかけて通学をしていた。
一番後ろの車両に乗り込み、ゆっくり4両編成の車内を歩き、先頭車両に到着する頃には
、カバンの中にたくさんのお金が集まっていたらしい。
「なぜか、みんながくれるんじゃ」
それはあんたがニラむからだろ。。
当時、香港のアクションスター、ブルースリーが大人気を博していた。映画の中で使われ
ていたヌンチャクが流行り、僕は通販で購入した。庭で買ったばかりのヌンチャクを使って練習をしていた。
ある日、兄ちゃんが○○高校との戦争だと言って、勝手に僕のヌンチャクを取り上げ、
夜、帰って来た時には、僕のヌンチャクは半分に折れていた。
この頃の兄ちゃんは、僕にもすぐケンカをふっかけてきて大嫌いだった。
優しい兄ちゃんは、もうそこにはいなかった。
母親は何度も高校に呼び出され、先生たちにいつも頭を下げていた。
「私の育て方が悪かった」
と、口癖のようになっていた。
父も兄ちゃんと顔を合わせれば、怒鳴るのだが半分サジを投げている様子だった。
嵐のような高校生活もなんとか終わりを迎え、母親は卒業式の日に一張羅のスーツを
着て出かけていった。
大変な出来事がたくさんあったけれど、
「卒業してくれただけでも、スゴイことよ」
鷹揚な母親も、やっと肩の荷が下りた様子だった。
卒業式の冒頭で校長先生が卒業する生徒たちへ言葉を送った。
「卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。」
「卒業され、これから社会人として恥ずかしくない道を歩んで行ってもらいたい。」
・・・・・・
「最後に、大二郎くんには、とても助けられました。感謝しています!」
と兄ちゃんの名前を口にしたらしいのだ。
ヤンキー高校の先生には武闘派が多く、そういった先生は生徒に舐められることはなかっ
たが、中にはそうでない先生もいて、キケンな生徒から狙われることも多く、時々兄ちゃ
んが危ないところを救っていたという話だった。
母親は複雑な顔をしながらも、
「あの子は、本当は優しい子なんよ。」
と僕に卒業式のことを話してくれた。
まだあの頃の優しさが残っているんだ。じわーっと胸が熱くなった。