仮面ライダーカードの功罪①

小学4年生の春を迎えた。
クラス替えはなく、小学3年と同じクラス編成だった。
ただ3年生の時の担任のおばあちゃん先生から、男の先生になった。
生徒たちは、おばあちゃん先生を舐めていて、
少しクラスが荒れ気味になっていたのだ。

その新しい先生は教室に入ってきて自己紹介をした。
「担任を任された清水です」
言葉に出したと同時に、教卓を右こぶしで殴り下ろした。
「バーン!」 
教卓は真ん中から半分に割れるんじゃないかと思うくらい、大きくしなった。
生徒たちは自分の席で飛び上がった。


「私は空手をやっていました。」 
「みんなをこれで懲らしめるつもりはありません。
ちゃんと言うことを聞くなら」
こぶしを見ながら、鉄拳先生は頬をゆるめた。

僕は4年生から学級委員に選ばれた。
よくないタイミングで選ばれてしまった。

鉄拳先生は、
「学級委員!」 
と事あるごとに声をかけてくる。

問題が起きると、
「学級委員ならどうする?」
と問いかけてきた。
学級委員は、僕と女子の川本さんの2名体制だが、
鉄拳先生は僕だけを執拗に教育するような雰囲気があった。

ちょうどその頃、仮面ライダーのカードが大流行し、
特に男子生徒はそのカードを収集するのがブームになっていた。
仮面ライダーがいろんなポーズを決めているカードで、
1番から500番くらいまでがシリーズとなっていて、
カルビーのスナック菓子に、1枚おまけでついてくるという代物だった。

こどもたちはカード欲しさにスナック菓子を買うのだが、
カードを手にすると菓子は不要とばかり、
食べずに道端のあちこちへ捨ててしまうことや、
箱買いするような生徒もおり、
金遣いの荒さが問題となっていた。

時期を同じくして大事件が起きた。
下級生のひとりが防火用水(火事の時に使用する人口池)で、
溺れて亡くなるという痛ましい事件が起きた。
防火用水に落ちた仮面ライダーカードを拾おうとして亡くなったらしい。

俄然、仮面ライダーカード禁止の声が校内で高まった。
お金持ちのシンジは500番までのシリーズを3セットくらい持っていたが、
禁止の声にうんざりしていた。

鉄拳先生は、
「学級委員!」 
とまた僕を呼び、
「全校でカード禁止について協議することになった。
クラスの意見をまとめてくれ」

僕はホームルームで仮面ライダーカード問題について説明した。
「学校からカードを禁止すべきではないかと、問題提起がありました。
クラスで意見を確認して最終決定とするそうです」
と説明をした。

いろいろと意見は出たが、最終的に多数決で決めることになった。
多数決は、カードを禁止しない派が、禁止派をわずかに上回った。

鉄拳先生はこれを受けて、
「それでは【カードは禁止しない】がこのクラスの決定事項です」
「後日、全校の学級委員が集まってこの件を最終決定します。
 あとは学級委員に委ねてください」
そう言って僕の方を見て笑った。

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