幼稚園に上がる前に、初めてのクリスマスを迎えた時の話。
クリスマスでは、欲しいものを届けてくれる人がいるらしい。
サンタクロースというおじいさんが、
寝ている間に、枕元に欲しいものをそっと置いてくれるらしい。
僕は、その頃、三輪車をほしがっていた。
「三輪車、買って!」
しつこく母親にねだっていた。
「サンタクロースにお願いすると叶うかも」
と笑いながら母親は、お祈りするポーズをとった。
僕は仏壇に向かって三輪車、三輪車と拝んだ。
明日はクリスマスだ。
布団の枕元に、ものが置けるようキレイにしておいた。
期待に胸を膨らませて、サンタクロースはいつ来るのか、
来たらお礼を言うつもりで待っていたが、
すぐに眠ってしまった。
朝目覚めると、すでに枕元に三輪車がでんと置かれてあった。
そのそばには、お菓子やおもちゃが入った鮮やかな分厚い紙で出来た
クリスマスブーツも一緒に置かれていた。
兄ちゃんは隣で寝ていたが、こちらは自転車だった。
小学生だった兄ちゃんは自転車がほしいと言っていたと思う。
同じくそばにはクリスマスブーツが置いてあった。
「サンタクロース、すごい!」
僕は、大判振る舞いのサンタさんに興奮していた。
兄ちゃんも嬉しそうだった。
それからしばらくして、僕がまたサンタクロースの話題を持ち出し、
「すごい人がおるもんじゃわ」
「会ってみたいのう」
と話していたら、兄ちゃんが、
「おまえ、ホンマにサンタクロースがおると思うとるん?」
「ガキじゃの!」
僕は必至に聞き返した。
「おらんの?」
兄ちゃんは、自信満々なすべてを知っている顔で、
「あれはお父ちゃんの仕業じゃ!」
「サンタクロースなんか、おるわけなあよ」
僕はその言葉に衝撃を受けた。
「ホンマに?」
いつもは怖いお父ちゃんは、優しい人なんだとしみじみ嚙みしめた。