僕の実家は瀬戸内海に面した小さな町の真ん中あたりにあり、
後ろには、標高800m超の高原を擁する山の国立公園があり、
そのすぐ斜め下に、三角山という僕ら仲間の中で大切な山があった。
三角山はその名のとおり、頭が三角の形状をしている。
もっぱら幼馴染のこうちゃんと登ることが多かった。
片道2時間ほどかかる道のりで、小学生にはなかなか厳しい山登りだ。
三角山に行く日は、自分たちの簡単な弁当を作り、リュックサックに詰めて、
午前中に出発した。暗くなったら帰れなくなる難しい道のりだった。
僕の実家から2人でてくてく山に向かって登っていく。
国立公園をも飲み込む山だらけの景色が、目の前いっぱいに広がっている。
大きな湖を横目に見ながら本格的に山に入っていく。
最初は兄ちゃんに道のりを教えてもらったが、
何度か登るうちにこうちゃんと最短の道順を探し当てていた。
なぜか三角山は石灰岩が多く含まれる山だった。
石灰岩とともに石英もたくさん見かけ、それがいずれ水晶に変わっていくのだ。
この頃は石灰岩が水晶になると思っていたが、水晶に変化するのは石英。
僕らは小さなスコップをそれぞれが持参し、石灰岩が多く分布する尾根へ向かった。
こうちゃんがさっそくリュックを降ろし、
水晶を見つけた経験のある場所を掘り始める。
僕たちが見つける水晶は、
大きくてもだいたい高さ3~4cmの六角柱の形をしたものが多く、
小さいとその破片やかけらのようなものが採れた。
こういう時のこうちゃんの集中力はすさまじく、
しばらくして、大きめな透明に少しグレーがかった水晶を掘り出した。
そして、それを僕に笑顔でかざした。
三角山は六角柱の水晶だけでなく、赤水晶と呼ばれる種類も見つけることができた。
それは六角柱水晶とは異なる場所にあり、尾根を下って川のそばに生息していた。
なぜか生息していたという言葉が似合うくらい、
ひっそりと地中ではなく地表に佇んでいるのだ。
赤水晶の形状は、六角中水晶とは異なり、
マッチ棒より細く、針より太いくらいの細く長い赤色の六角柱が、
何本もベースとなる石の上に生えているのだ。
生えているという言葉はおかしいかもしれないけど、
石から育ったような雰囲気がある。
僕は透明の六角水晶は見つけられなかったけど、
赤水晶を何個が見つけることができた。
こうちゃんも何個か見つけたようだ。
そろそろ日が暮れてくるので、下山を始めた。
後日しばらくして、こうちゃんが言った。
「そろそろ出来とる頃じゃないか?」
水晶のことだ。水晶はそんな何週間単位では出来上がりはしない。
でも山の中をグングン進んで、水晶を探す旅は僕らにとって格別な探検なのだった。