-
不器用な男①
僕の兄ちゃんは、勉強ができるほうでもなく、とりわけ運動神経が良かったわけでもない。でもいつもニコニコして、明るくて、相手のいいところを見つけたら素直に褒める人だった。疑うことがない純粋な人だ。 僕は兄ちゃんのように素直な言葉が使えなかった... -
小学生、ヤキを入れる!
僕の幼なじみ、こうちゃんは4歳からの付き合いだ。僕の実家の200mほど下ったところに、こうちゃんの家がある。 こうちゃんのお父さんは、大きな造船会社の副社長で、見るからにかっこいい人だった。山本五十六の血を引く家柄だそうで、それで造船なのかど... -
かに三昧
「僕が東京から戻って、おふくろの面倒を見るよ」実家で兄ちゃんと2人で話した時に、僕から発した言葉だ。 母親は85歳を超えていたが、自分のことは自分で何でも出来たし、僕が帰省すると、いつも美味しいご馳走を作ってくれてさえした。 そんな母親に対し... -
今日と明日が出会う時
「もうすぐ時計は12時を回ろうとしている。。今日と明日が出会うとき....クロスオーバーイレブン」 学生時代に聞いていた23時すぎから始まるFMラジオ番組。好きだったなぁ。 日付がまたがるこの時間帯は、私の住んでいた田舎町では明かりがなくなり、暗闇... -
ふと、伊集院静の小説の一節
以前読んだ伊集院静の小説で、実話がもとになった話がある。 離婚した主人公が、高校生になった娘と14年ぶりに再会するという物語。ふたりは上手く話せないまま、学生野球のリーグ戦を観戦することに。試合は六回を過ぎ、八対〇のワンサイドゲーム。負けて... -
クリスマス
幼稚園に上がる前に、初めてのクリスマスを迎えた時の話。 クリスマスでは、欲しいものを届けてくれる人がいるらしい。サンタクロースというおじいさんが、寝ている間に、枕元に欲しいものをそっと置いてくれるらしい。 僕は、その頃、三輪車をほしがって... -
仮面ライダーカードの功罪②
仮面ライダーカードの是非を決定する日がやってきた。全校の学級委員が音楽室に集まった。音楽室は、後ろの席になるにしたがって、段差が高くなるすり鉢状の部屋だった。1クラス2人の学級委員、6年×4クラス、合計48人ほどが集まり、先生を含めると50人... -
仮面ライダーカードの功罪①
小学4年生の春を迎えた。クラス替えはなく、小学3年と同じクラス編成だった。ただ3年生の時の担任のおばあちゃん先生から、男の先生になった。生徒たちは、おばあちゃん先生を舐めていて、少しクラスが荒れ気味になっていたのだ。 その新しい先生は教室に... -
母の強がりとため息
僕は日頃、父と会話することは少なく、何となく距離を感じていた。その時代の男はそういったものだったと思うし、僕自身もそういった「男は黙って・・・」という側面を持っていると思う。 ただ父はなかなか厳格な人で、細かいことにもうるさいところがあっ... -
ヒッチハイク
僕の実家は、瀬戸内海に面した小さな町の真ん中あたりにある。後ろには標高900mほどの国立公園に指定されている山々がそびえている。この山にはレストランや娯楽施設などがあり、田舎町のわずかな観光地のひとつだった。 大晦日にこの山を目指し、初日...