2025年– date –
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ふと、向田邦子小説の一節
以前読んた向田邦子の小説で、彼女の体験談に下記のようなものがある。 なぜか、ふとその一節を思い出した。 夜タクシーで帰宅することにし、 自宅のアパートの前で止めてもらった。 「ご苦労さま」 と声をかけ、料金を渡すために運転手に右手を差し出した... -
苦いジュースと太陽の笑顔
僕は小学3年生の時に腎臓の病気にかかり、1ケ月ほどの入院生活を終えて自宅に帰ってきた。運動禁止、絶対安静、塩分食禁止、力が入ろうはずもない。フラフラするなと思ったらひどい貧血だった。慢性腎炎は貧血を起こすことが多いらしい。 塩分が取れない... -
三角山と赤い水晶
僕の実家は瀬戸内海に面した小さな町の真ん中あたりにあり、後ろには、標高800m超の高原を擁する山の国立公園があり、そのすぐ斜め下に、三角山という僕ら仲間の中で大切な山があった。 三角山はその名のとおり、頭が三角の形状をしている。もっぱら幼馴染... -
転校生
小学2年生の時、僕のクラスに東京から転校生がやってきた。田舎の小学校では見たことがない垢ぬけた女の子で、男子生徒全員の落ち着きがなくなったように思えた。僕の日常はその日以来、単色だった景色がカラーになった。 その子は勉強も出来たし、スポー... -
トングの痛い思い出
僕は小学3年生の時に腎臓の病気にかかり、1ケ月ほど入院していた。当初、原因は定かではなかったけど、外から入った菌で扁桃腺に炎症が起き、ミートボールくらいに腫れてしまい、それで高熱を発し、腎炎を併発したということだった。 慢性腎炎を治す薬はな... -
シンジの涙
小学3年生の授業の最中、突然シンジが暴れ出した。教室の後ろに生徒のカバンを納める棚があり、その棚からいくつものカバンを掴み出し、放り投げはじめた。 クラスの誰かに悪口を言われたらしい。「バカタレが!」シンジは毒つきながら、今度は水の入った... -
紋白蝶
僕の家の前にはわりと大きめな畑があり、季節によっていろいろな野菜が育てられていて、その頃はキャベツやトマトが栽培されていたと思う。 当時いろんな生き物をつかまえては家に持ち帰り、飼っていた。カエル、ヘビ、カマキリ、カブトムシの幼虫など。。... -
パール街の少年たち
子どもの頃、実家に少年少女文学全集があり、片っ端から読んでいたところ、衝撃を受けた作品があった。 「パール街の少年たち」という小説で、何気ない子供たちの日常が延々と語られているのだが、ネメチェクという小柄な少年が不条理な事柄(内容は忘れた... -
口をあけた子ども
幼いころ、僕は口をあけている子どもだった。父からは、「バカみたいに口をあけるな!」とよく叱られた。ハナは垂らしていなかったと思う。 あれから何十年も過ぎ、さすがに口をあけてはいないが、思い返すと何か遠くのことを考えていたような、前の世界と... -
僕という入れもの
昨年母が倒れ、年末に帰らぬ人となった。歳はいくつになっても、男子にとって母はとても大きな存在だ。 僕は、母が住んでいた実家から遠く離れたところにいる。自宅に母の遺影を飾り、花を生け、言葉をかけてみる。半年が過ぎても、何も整理がつかなかった...